学術論文紹介:「障害者の職場定着を促す人事管理」(丸山・島貫,2021)

更新日:2021年10月12日

学長の中川です。国内の経営学関係トップ学術誌『組織科学』最新号に掲載されている丸山・島貫(2021)「障害者の職場定着を促す人事管理」稿が非常に優れた論文でした。その知見を共有したいと思います。


障害者の会社での遇し方について。 「君たちは特別な人」と遇するか。 「君たちは私達と同じ人」と遇するか。


イデオロギー的な問題であり、容易に答えを出せない現代の重要なテーマです。そんな難問に対し、同論文は、実証的なアプローチから「どちらが正しいかは、時と場合による」というリアリティを描き出します。


職場という非常に繊細な場においては、単一のイデオロギーが正解になることなど、ないということ。望ましい障害者の遇し方は、ちょっとした条件によって変わってくるわけです。


●職場において、障害者の業務遂行能力が高いと捉えられている時には「君たちはと私たちは同じだ」と遇すべき。逆に、障害者の当該業務遂行能力が健常者よりも劣ると捉えられているときは「君たちは特別に扱われるべきだ」と遇することが障害者定着につながる。


●職場において、管理者の裁量が小さいときには、管理者はきめ細やかに一人一人のメンバーに対応できなくなる。そういう場では、組織としての管理・処遇の一貫性を重視したほうが納得感が高まるため、障害者を特別扱いせず、「君たちも私達も同じなのだ」と扱うべきである。


●職場において、管理者の裁量が大きい時には、管理者が一人一人にきめ細やかに、柔軟に対応することができるから、障害者ひとりひとりの違いに寄り添い「君たちの個性に特別な配慮をすべき」と遇することが適切となる。


以上のことを、6つの職場への丹念な事例研究から、明らかにしています。


今日のマネジメントというものの難しさと、人の心の妙味を感じさせる、人事分野の非常に大切な論文だと思います。


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インクルーシブな社会のあるべき姿は「みんな違って、みんないい」なのか、それとも「あなたも私もみんな同じ仲間」なのか。どちらか、なのではないのです。時と場合によって、対応は分けるべきだ。こうした中道で柔軟な姿勢こそが、現場のマネジメントで大切であることを示してくれている、素敵な論稿だと思います。

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